無農薬栽培とは

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無農薬栽培とは

無農薬栽培は、通常の農法から農薬だけをマイナスするわけではありません。それでは虫に喰われてしまいます。肥料で肥満した作物は虫を呼び寄せるので、肥料を止めるか、分解される前の炭素素材を与えます。また草を生やします。草がないと作物だけに食害が集中し、害虫の天敵の隠れ場所もなくなってしまいます。また草によって土が剥き出しになるのを防ぎ、土壌の湿度や温度を安定することで微生物が育て、作物の免疫力を高めます。

そして蒔く種が違います。通常は「一台交配種(以下F1種)」と言われる、他の植物と交配させた雑種を使いますが、無農薬栽培では主に「固定種」を使います。固定種とは、その土地で採種を繰り返して品種を固定した種子です。無肥料でも育ちやすい種子を手に入れることで、無肥料栽培を実現すれば、虫による食害が減るため殺虫剤が不要になります。この農法では、もうひとつの農薬「除草剤」は使うことができません。これらの農法は一般に「自然農法」と呼ばれています。

自然農法に明確な基準はありませんが、無肥料不耕起不除草無農薬の四点で定義されることが多いようです。これについて、いくつか疑問は残ります。江戸時代以前の農業でも畑は耕すもので、積極的な施肥も行われていました。化学農薬のない時代ですが、除草作業はされていました。それよりももっと原始的な農業となると、効率が悪くなりそうです。ただ江戸時代と比べると、気候が温暖でコメや小麦が実りやすくなりました。多くの野菜も暖かいほうがよく育ちます。

無肥料の場合、植物は光合成で糖を作り、根に送って地中に放出します。その糖にバクテリアが寄生します。バクテリアとはもっとも小さく、もっとも数の多い土壌微生物の一種です。このバクテリアが何かを分解すると肥料になります。多くは糸状菌など、微生物の死骸を分解して植物の根に送ります。こういった成長には時間がかかりますが、ビタミン、ミネラルが豊富で、質の良い野菜に育ちます。

農薬や化学肥料に頼らないという価値観

福岡正信 福岡正信氏(1913〜2008)により不耕起、無肥料、無農薬、無除草を原則とした自然農法が提唱されると、その後多くの農家がさまざまな方法を試してきました。現在、福岡氏と同じ農法をしている人はたぶんいないでしょう。地域により環境が違います。同じ地域でも地形や土質によって植物の育ち方は違います。共通しているのは自然の山野を見本にすることです。自然林の草が無農薬でも虫に喰われないのはなぜでしょう。ときどき喰われていますが軽度です。そこには食物連鎖のピラミッドが成立し、害虫だけが突出して増えることがないからです。

トラクターで土を耕してしまうと土壌中の生物が死んでしまいます。畑に自然林のような豊かな生物層を再現し、自然の摂理に従って作物を育てようというのが自然農法です。地上にも土壌中にも害虫と益虫がいますが、その比率は常に一定です。害虫を捕殺すると、それを餌にしていた益虫も減るということです。

生物層を豊かにするブラックバス効果

ブラックバス効果 例えば人による鮎の成魚放流は、食物連鎖のピラミッドに強い影響を及ぼします。鮎の餌は水苔ですが、河川には同じく水苔を餌にしたり、隠れ家にする生物がいます。自然界で鮎が大量に孵化した場合、多くは稚魚の段階で他の魚に食べられて、個体数は調整されます。しかし成魚放流という、自然界では起こりえないイレギュラが発生すると、水中の生態系は急激に乱れます。鮎の成魚を食べるのはナマズか川鵜ぐらいです。そこにブラックバスがいてくれたらどうなるでしょう。放流された鮎を吸収してくれることになり、生態系は比較的早くバランスを取り戻します。逆に何らかの理由で鮎やその他の魚が減ると、ブラックバスも数を減らします。

人間が特定の魚種だけを人為的に放流しても、生物層さえ豊かなら公害を吸収してくれます。これと同じ原理で野菜を育てようとするのが自然農法です。畑に特定の野菜だけを植えて、草を除去してしまえば生物層が貧しくなり、特定の病害虫が急増するなど、野菜そのものを育てにくくなります。スプーン一杯の土に500種の微生物が棲息しているとしたら、それを人為的に600種に増やすことでブラックバス効果が発現し、より安定した食物連鎖のピラミッドを構築することができます。そこには益虫や害虫の概念はありません。

種子という安全保障

種子 日本はほとんどの種を海外からの輸入に頼っています。万が一種子が入ってこなくなったら、どうすればいいのでしょう。世界の種苗の多くはモンサント社(米遺伝子組換大手)が握っています。遺伝子組み換え種子に関して9割以上のシェアを占めています。

モンサント社が提供する種子は主にF1種と遺伝子組み換え種です。前者は物理的に、後者は契約上自家採種ができません。種子の知的財産権は種苗メーカーにあり、作物から勝手に種をとってはいけないということです。生物特許はまだ理解できます。驚いたのはメキシコで出されたモンサント法案です。メキシコでは自家採種が禁止され、種子は必ずモンサント社から買わなければならないというものです。農家はすべてモンサント社の農奴になれという法案です。

さすがに日本ではこんなことは起きないだろうと思われていましたが、起きました。種子法の廃止です。種子法とは、主要作物に関しては都道府県は責任をもって開発、更新を行い、農家に安く提供しなさいという法律です。種子法の廃止により種子は公共のものから企業のものに変わります。2018年より、大きく報道されることなく、農業関係者以外の誰にも気付かれることなく種子法が廃止されました。アメリカが種子でもって世界を支配しようとしていることは明白です。安全保障は何かひとつが欠けても機能しません。軍隊や武器、エネルギーがあっても、食糧がなければ国家として自立することはできません。

F1種と固定種

農業に使う種子は大雑把に三種類あります。一台交配種(以下F1種)、固定種、遺伝子組換種です。このうち日本でもっとも多く使われているのがF1種です。スーパーに並んでいる野菜のほぼすべてがF1種です。

F1種とは

F1種は、強制的に他の植物の花粉を受粉させて作った雑種です。メンデルの法則により、一代に限り母株と父株、双方の優性だけが顕れます。これを雑種強勢と言います。しかしF1種から種を採る(F2)と、今度は劣性形質も発現し、求めている品質が得られなくなります。「雄性不稔種のF1種の子は必ず雄性不稔になるから子孫を残せない」と書かれた書籍を見たことがありますが、それは嘘です。わたしは何度でもF1から種子を採ってF2、F4と栽培を続けています。

F1種のメリットは均一な遺伝子です。すべての種がクローンのように同じ育ち方をします。同時に発芽し、同じスピードで育ち、同じ時期に花が咲きます。追肥や摘花のタイミングが揃うので、作業の効率が高まります。重要なのは同時に収穫できることです。収穫を終えたら、すぐに畑を耕して次の定植や播種に取りかかることができるからです。成長速度がバラバラだと、遅い株の成長を待つか、諦めなければなりません。これでは効率が悪くなります。

固定種とは

固定種の種 固定種は播種しても同時には発芽しません。極端な言い方をすれば、三日で発芽するものもあれば、三か月後に発芽するものもあります。成長のスピードもバラバラです。できたものから食べる家庭菜園ではメリットになるかもしれません。その中でもっとも大きく育ったもの、美味しいもの、虫に喰われなかったものなどを畑に残し、花を咲かせて採種します。成長の早いものは『早生』、遅いものは『晩生』として保存します。早生と晩生を同時に蒔けば、早生を収穫し終えたころ晩生の収穫が始まります。一般に早生より晩生のほうが旨いので、だんだん美味になります。

その土地で自家採種した種子は、土地に馴化しているため病害虫に強く、農薬を使わなくても元気に育つ確率が高くなります。『野菜は雑草より軟弱だ』という人もいます。確かに遠いところから連れて来た種子では、何百年も前からその土地にいる雑草より弱いかもしれません。しかしその土地でもっとも逞しく育った株から採種された固定種は、決して軟弱ではありません。

ターミネーター種子の恐怖

ターミネーター種子とは米モンサント社(遺伝子組換大手)が特許を取得した「採種防止技術」です。正式名称を「不稔種子」と言います。外見は普通の種子で、播種すると普通に育ちます。しかしその植物から種を採って蒔くと、発芽と同時に毒を発生して自ら殺すように遺伝子が組み替えられています。そのため自殺種子とも呼ばれています。

ターミネーター種子から育った作物の花粉をミツバチが運び、他の植物が受粉してしまう可能性があります。幸いにも国連生物多様性条約締約国会議で事実上の禁止が決まり、モンサント社も商品化するつもりはないと宣言しました。しかしブラジルでは毎年のように解禁を認める法案が提出され、その都度世界から批判を浴びています。法案作りにはモンサント社が関わっていることも暴露されました。モンサント社は虎視眈々とターミネーター種子の商品化を狙っているということです。

遺伝子組換え作物の人体への影響はまだ分かっていません。生まれたばかりの赤ちゃんが毒を発生して死んだとしても、ターミネーター種子との因果関係を証明するには何世代かの追跡調査が必要です。雄性不稔と精子減少の因果関係ですら未だ証明されていません。わかり切っていても証拠がなければ罰することができないのです。

持続可能な農業とは

化学農薬や化学肥料、種子などが輸入できなくなって、農機具の燃料であるガソリンが手に入らなくなっても、太陽と水だけで作物を栽培するノウハウやインフラを保存することではないでしょうか。輸入が止まるような事態は、実際には起きないと思いますが、今のペースで農業資材や食品価格が上がり続ければ、いつかは言ってやらなければなりません。『そんな高いなら要りません』と。

そのために、農家は輸入に頼らない栽培を実現しなければなりません。それは消費者と二人三脚で行わなければなりません。なぜなら、オーガニック野菜は市場では安く買いたたかれてしまうからです。都会のスーパーの野菜売り場から芋虫が這い出てきたら阿鼻叫喚地獄です。流通が求めているのは、規格品のようの形、サイズが揃っていて、虫に喰われていない野菜です。そして飲食店が求めるのは、ひたすら安い野菜です。

オーガニック野菜は購入層も流通ルートも独特で、価格が高くなっています。

会話が必要です

消費者と農家の間で会話が必要です。

食の安全とは、無害で栄養が豊富な意味と、安全保障の意味があります。安全は当たり前のものだから、それを売り文句にしてはいけません。オーガニック野菜は生産原価は安くなりますが、とても手間がかかります。とくに草の管理には手間がかかります。また種を採るために長期間畑の一部を犠牲にしなければならないなど、経済効率が悪くなります。

例えば消費者側が労働力を提供し、報酬を作物で受け取ればWin-Winです。土には触りたくないという人は消費者団体を結成して安定した量を定期的に書いとるなどでもWin-Winが実現します。肥料ではない「炭素素材(落ち葉など)」を大量に提供できる人がいるかもしれません。食品加工業者や、料理教室とオーガニック農家が手を組めば最強のコンビになります。そのための会話が必要だと考えます。